さて,今日は橿原でハイキング(天香久山)の続きだな。

香久山の山頂から下りてきて暫く歩くと,遠くに鳥居が見えてきた。


   

   石造りの鳥居は決して大きくはないけど,緑の中にあって存在感がある。


   

                天香山神社だ。


   

    御祭神は櫛眞神(櫛眞智命神=くしまちのみことのかみ)

    元名 大麻等地神(おおまとのちのかみ)。



『櫛は奇(不思議) 真は兆(占い)の古語にて神武天皇記に、天香山の社が見え創建古し。』

何言ってるかさっぱり分からないだろ?




まずは『櫛は奇(不思議)』の部分。

日本神話において,櫛は不思議な力を持つとされていたんだ。

例えば,イザナギが黄泉の国(黄泉比良坂のお話)から脱出する時に,折った櫛の歯を投げつけて筍を生やすというお話がある。

この頃の櫛は竹製だったようなので,まぁ,筍が生えてもおかしくはない?たぶん?

神話なので細かいツッコミは無しで・・・(´・ω・)

付け加えておくと,この筍はかなり美味しかったと思われる。

なにしろ,追手によって完食されたらしいんだな。


後は,スサノオは八岐大蛇退治の時に櫛を身に着けている。

この櫛の正体は,後に彼の妻となる奇稲田姫(櫛名田比売=くしなだひめ)だったりする。

この場合は,櫛の持つ力に女性の持つ生命力を倍率ドン!したので,物凄い力を持っていたと考えられている。


という訳で,古代では櫛自体が呪の力を持つものとして認識されていたようなんだな。

それで櫛=奇(不思議)と変換されたんじゃないかなと。



次に『真は兆(占い)』だな。

辞書なんかを見て貰うと分かるけど,兆には(古代の)占いという意味があるんだな。

みんなも教科書とかで習ったことがあると思うんだけど・・・。

亀の甲羅とか動物の骨を焼いて,そのヒビの入り方で吉凶を占うってお話に記憶はないかな?

これをト占って呼ぶんだけど,兆はこの占いの割れ目の事を指してるんだ。

そんな訳で,この神様はト事に関わるのようなんだな。






   

          春過ぎて~の歌碑はいい感じに苔むしている。


   

          こちらは柿本人麻呂の万葉歌碑。


久方之  天芳山  此夕  霞霏霺*  春立下

ひさかたの あまのかぐやま このゆふべ かすみたなびく はるたつらしも

(ゆるい訳:日暮れになって天の香具山に霞がたなびいている いよいよ春になったのだなぁ~)

*文字化けしてるかも

雨冠に微に似た字を書くんだけど,小雨の事だ。

霞=かすみ,霏=もや


   

          植物の生命力ってすごいっ!て思う。


橿原を歩いていると,時々,万葉歌碑に出会う。

全部で23カ所あるそうなんだけど,意外と見落としてるっぽい。


   

            波波迦の木だって?


波波迦(ははか)って言うのは,天岩戸事件の時に出てくる植物の一つだ。

桜と言ってもソメイヨシノのような花ではなく,強いて言えば・・・ボトル用のブラシって分かるかな?

あれをもうちょっと「ふわっ」とさせた感じの花が咲くんだ。


   

          残念ながら秋なので花は咲いていない。


天岩戸事件の時には,この波波迦の木の皮を使って男鹿の骨で占いをしたと言われているんだ。

さすが,天香具山だな。

神話に出てくる植物が普通に生えてる。

波波迦別名はウワミズザクラ(上溝桜,上不見桜)と言うんだ。

上を見ない桜。

つまりは,元々は高天原に生えていたって事なのかもしれないな。


   

          手水舎には2枚のタオルが。


ひっそりとしてるけど,タオルの様子を見る限りきちんと管理されてるようだ。


   

         小さな鳥居は明治天皇遥拝所。


遥拝所って言うのは,遠くにある神社とかお墓,誰も足を踏み入れることができない禁足地などを礼拝する為の場所だ。

よくあるのが,伊勢神宮遥拝所だな。

お伊勢さんに行けないので,代わりにここからそちらの方角に向かって参拝しますね,っていう感じの場所が伊勢神宮遥拝所って思って貰えばいい。


で・・・どういうことだ?

この周辺には「伊勢神宮」とは書かれていない。

まさか,本殿を参拝するのが恐れ多いからここから礼拝したとか?

だとしたら,実はとんでもない神様なのかもしれないぞ・・・(;´・ω・)

(神職さんが居たら確認できたんだけどなぁ~)


   

         天香山坐櫛眞命神社と書かれている。


あめのかぐやまにいますくしまのみことじんじゃ でいいのかな?

「坐」って言うのは,通常は「います」と読むんだ。

例えば,飛鳥寺のそばにある飛鳥坐神社は「あすかにいますじんじゃ」って読む。

ただ,振り仮名表記が見当たらなかったので,正確な読み名は分からない。

   

   

    拝殿から本殿を・・・って丸見え過ぎて,申し訳ない気がしてくる。

だって,さっきの遥拝所の仮定の話が本当だったら・・・なんだかなぁって思うだろ。


因みにこの神様,大嘗祭の神饌田を選ぶト定(ぼくじょう)**の神様にもなってるようだ。

ト定**=ト占(上に出てきた亀の甲羅とかで占う方法)で吉凶を占い,物事を定めること。



神武東征記でもパワースポット扱いされている天香山にある神社だけあって,やっぱり只の神様ではなさそうだ。



という訳で,神話の世界を肌で感じる事のできる天香山神社に興味のあるみんなは,是非とも訪ねてみて欲しいんだなっ♪

   

今日は帰って来たのが19時近かったので,時間の都合上,おやつは無しで。